absolute-happiness-SGIの日記

絶対的幸福とは?&生命(いのち)を守る(防災・平和・核廃絶)

災害関連死は政治の失敗! 避難所運営の課題と課題への視点 避難所・避難生活学会 水谷代表に聞く

災害関連死は政治の失敗!

避難所運営の課題と課題への視点

避難所・避難生活学会 水谷代表に聞く

 要点 箇条書きまとめ


1-避難所運営の根本的な仕組みが変わっていないため、被災者や支援者の負担軽減は限    定的

2-問題の根底にあるのは、支援物資を後追い的に届ける「逐次投入」の手法

3-避難所ごとに支援の質などの環境の格差が広がり、運に左右される「避難所ガチャ」の様相を呈してしまっている。

4-求められるのは、いつ・どこで・誰がやっても・どの災害規模でも、
 発災48時間以内に同じ質の避難所を立ち上げられる「再現性」の確立である。

5-先進的んあイタリアンの事例が参考になる。避難所運営を現場の知識や経験だけに委ねない「全部任せてね方式」への転換が必要。

6-被災レベルと避難者の属性に応じた合理的な役割分担を設けることも鍵となる。

7-全国市町村に避難所対応を委ねる従来の体制を改め、国が標準化された「国家避難所能力」を直接保有・整備することが必要。これを全国(避難者12・5万人文)整備した場合、国民一人当たり年間 200円程度の負担で実現できる。

8-災害関連死から被災者を守るのは現場の頑張りではなく「制度」だ。避難所支援は自助・共助ではなく100%「公助」である。

9-イタリアでは「たった一人の命も救えないのなら制度を変えるしかない」という強いリーダシップがある。いま関係者全員に徹底されているのは「避難所で人が亡くなることはあり 得ない」との共通認識だ。


---------以下 公明新聞 9/26-2026 ---全文-------------

土曜特集 熊本地震2カ月
避難所運営の課題と改善への視点
避難所・避難生活学会 水谷嘉浩代表理事に聞く
2026/09/26 4面 公明新聞


 7月28日に発生した熊本地震から間もなく2カ月。被災地では今も1500人超が避難所に身を寄せる。夏場の酷暑下、避難所ではTKB(トイレ・キッチン・ベッド)をはじめとする環境整備が喫緊の課題となった。過去の災害の教訓は生かされていたのか。現地で支援活動に当たった「避難所・避難生活学会」の水谷嘉浩代表理事に、避難所運営の課題と今後の改善に必要な視点を聞いた。


■TKB進むも現場はパンク…質に差が出る「ガチャ」状態
 ――熊本地震における避難所の現状をどう見るか。
 発災翌日の7月29日に現地に入った。猛暑の中で避難者が置かれた環境は極めて厳しかった。段ボールベッドの配備が、発災から約2週間と従来より早まるなどTKBの改善は見られたものの、避難所運営の根本的な仕組みが変わっていないため、被災者や支援者の負担軽減は限定的だ。
 食事も依然として、おにぎりや菓子パン中心の場所が多い。人の手で作られた温かい食事は、疲弊した被災者の「心の栄養」となる。心身の健康が保たれて初めて前を向くことができ、避難所が本来果たすべき「生活再建の場」としての機能が成り立つことを忘れてはならない。


 ――過去の災害で得た教訓は生かされているか。
 残念ながら十分に生かされているとは言えない。発災翌日でも現地に情報が入らず初動が遅れ、状況把握のための「ニーズ調査」を行ってから物資を手配する手法が踏襲されていた。これは、火災が起きて目の前で燃え広がっている最中に、消防車が何台必要かを調べているようなものだ。
 問題の根底にあるのは、支援物資を後追い的に届ける「逐次投入」の手法だ。ベッドが届いた1週間後に寝具、その後にシャワーや洗濯機と、支援が遅れて届く。これは環境が徐々に改善しているのではなく、満たされないニーズによる不満や健康被害リスクが時間とともに累積している状態と言える。長引く断水下で衛生環境が悪化し、10年前の地震も経験した避難者から「これまで何をやっていたのか」と強い不満が聞かれたのも無理はない。


 ――物資の輸送や人的支援については。
 国から物資を送るプッシュ型支援は、自治体から各避難所に輸送する段階で目詰まりが起きていた。被災自治体に仕分けや配分の過大な負担を強いる「後はよろしくね方式」となり、現場をパンクさせている。全国からの応援職員も避難所運営の専門知識を持つ人が少ないため、物資のバケツリレーに追われるなどして現場の混乱を解消できていない。いわば、消防車だけを送り込み、現地に消防士がいないような状態だ。
 結果として避難所ごとに支援の質など環境の格差が広がり、運に左右される「避難所ガチャ」の様相を呈してしまっている。


■物資と支援者まとめて投入「全部任せて方式」に転換を


 ――改善に必要な視点は何か。

 求められるのは、いつ・どこで・誰がやっても・どの災害規模でも、発災48時間以内に同じ質の避難所を立ち上げられる「再現性」の確立である。
 そのためには、従来の単品物資を配備する方式から脱却し、標準化(S)・ユニット化(U)・機動力化(M)を掲げる「SUM基準」への転換が必要だ。これは、スペックを統一した物資や設備を、専門職の支援者と一式パッケージにして現地へ即座に送り込む新たなアプローチである。避難所運営を現場の知識や経験だけに委ねない「全部任せてね方式」への転換と言ってもいい。


 ――具体的にどのような仕組みなのか。
 先進的なイタリアの事例が参考になる。イタリアでは「避難者250人+支援専門職(技術者や飲食、医療、福祉関係者など)50人=計300人」を1単位(ユニット)とし、長期間自己完結できる資機材やTKB設備、専門チームを丸ごと投入する。資機材にはエアコンや洗濯機、大型発電機なども含まれる。災害規模に応じて投入ユニット数を調整するため、非常にシンプルかつ確実に対応スケールを拡大できる。
 また、厳格なタイムラインが制度化されている点も特徴的だ。例えば、6時間以内に避難者の収容やトイレ設置、12時間以内に温かい食事の提供、そして48時間以内に医療や福祉など全ての個別ニーズへのアクセスを完了させると定められている。


 ――このほかに必要な視点は。
 被災レベルと避難者の属性に応じた合理的な役割分担を設けることも鍵となる。初期段階で避難者を一時的・短期的に滞在する「予防避難群」と、自宅が倒壊するなどして避難生活が中長期に及ぶ「生活機能喪失群・居住不可能群」に分類し、後者は国が責任を持って対応することが重要だ。
 その上で、後者の避難所はライフラインが機能している安全な「被災区域外」に設置し、避難者を移送する運用を求めたい。イタリアでも安全なエリアに避難拠点を置き、中長期避難者をシャトルバスなどで毎日、自宅の片付けへ送り届けるという実質的な運用を行っている。


■国が標準化された設備保有を


 ――日本でこの仕組みをどう取り入れるか。
 必要なのは、全国1741市区町村に避難所対応を委ねる従来の体制を改め、国が標準化された「国家避難所能力」を直接保有・整備することだ。これを全国で約500ユニット(避難者12・5万人分)整備した場合、20年間の耐用年数や維持管理費を含めても、国民1人当たり年間200円程度の負担で実現できる。
 物資の搬送においても手作業を脱し、フォークリフトやトラックで即時に一括搬送できるコンテナ型の機動拠点を国主導で構築すべきだ。
 避難所支援は自助・共助ではなく100パーセント「公助」である。基礎自治体で対応しきれない広域災害は、国や都道府県が肩代わりする「補完性の原理」を導入すべきだ。国会主導で、法制度の見直しも含めて検討してほしい。
 今後設置される防災庁の役割も重要だが、災害関連死から被災者を守るのは現場の頑張りではなく「制度」だ。


■自治体は実践的な訓練重ねて


 ――地方議会や自治体の果たすべき役割は。
 まずは自治体の防災訓練予算の実態を確認してほしい。避難所を「開設して終わり」の訓練を改め、実際の資機材を用いて3泊4日などで確かめる実践的な「維持・運営訓練」を重ねる必要がある。
 横浜市は既にTKBなどの資機材一式をユニット化して管理し、発災時には必要なエリアに機動的に設置することで一定期間、避難生活を送れる環境整備を進めている。ただ、資機材の整備には相応の費用がかかるため、国が購入して自治体に配備・保有させる財政支援の仕組みが不可欠だ。


 ――避難所環境を抜本的に変えるための機運や国民意識をどう育むか。
 イタリアで手厚い支援体制が築かれた背景には、大きな挫折と反省の歴史がある。災害対応の司令塔となる市民保護局は、1980年に3000人以上の犠牲者を出したイルピニア地震を教訓に82年に発足した。その前年にはローマ近郊で6歳の男の子が井戸に落ちて命を落とす痛ましい事故があり、「たった1人の命も救えないなら制度を変えるしかない」という強いリーダーシップと国民的な機運が高まった経緯がある。
 いま関係者全員に徹底されているのは「避難所で人が亡くなることはあり得ない」との共通認識だ。それゆえにイタリアでは、大規模な避難所運営訓練が日常的に行われている。訓練であっても、警察が交通規制をかけてユニット化した資機材を運ぶ車列を通し、それを市民が手を振って見守る光景が見られるほどだ。
 災害はいつ起きるか分からず、全く同じ条件の災害は二度とない。だからこそ「本番」で悩むのではなく、平時の訓練に予算を投じる意識の転換が必要だ。訓練のために資機材を保有し、専門職チームをそろえる。日常的な訓練を重ねてこそ、発災直後の即応性と再現性を担保することができるのだ。

避難所運営



 みずたに・よしひろ 1970年、大阪府生まれ。同志社大学卒。段ボールメーカー・Jパックス株式会社代表取締役。2011年の東日本大震災をきっかけに、災害関連死を減らすため、自ら設計した段ボールベッドを災害時に各地の避難所に届けるなど支援活動に当たってきた。15年に「避難所・避難生活学会」に設立発起人として参画し、25年から現職。博士(工学)。